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2025年の崖 – DXを推進しない企業の転落する未来

「2025年の崖」について分かりやすく解説

前回まで2回にわたり簡単にお話ししたデジタルトランスフォーメーション。
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」と呼ばれる資料の中で「2025年の崖」という言葉が出てきます。
今回は「2025年の崖」の概要を踏まえながら、企業には現在どのような課題があり、2025年にはどのような危機が待ち受けているのか紹介します。

2025年の崖とは??

「2025年の崖」とは、日本企業がこのままDXを進めず、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合に想定される、国際競争への遅れや我が国の経済の停滞などを指す言葉です。

DXが進まなかった場合、2025年までに予想されるIT人材の引退や、サポート終了などによるリスクの高まりなどが停滞を引き起こすとされており、経済的な損失が最大で年間12兆円と算出しています。

これはあくまで「年間」であり、2025年以降毎年12兆円もの経済損失が生じるとして、経済産業省は強く警鐘を鳴らしているのです。

出典:経済産業省

2025年まであと4年ではない!既に転落し始めている!?

DXを進められなければ、現在使用しているシステム=レガシーシステムが2025年以降も残り続けることになります。このレポートでは、2014年段階でデータ損失やシステムダウンなどのシステム障害による損失が国内全体で約4.96兆円にのぼるとの調査結果を参考に、別の調査でレガシーシステムに起因して発生するシステムトラブルが全体の約8割であるとして、2018年の段階で「4.96兆円×8割=約4兆円」の経済損失が発生すると推定しました。

そのうえで、企業の基幹系システムの稼働年数を調査した報告書の内容から、2025年段階で21年以上システムが稼働している企業の割合を60%と見積もっています。この点を踏まえると、レガシーシステムによるシステムリスクも現在の3倍に上昇するとして、2025年以降の経済損失額を年間で約12兆円と推定したのです。

ここで注目したいのは、2025年以降における経済損失額の大きさもさることながら、その算出根拠が過去の統計データであることです。2014年の時点で経済損失額が年間約4兆円にのぼるということ、そしてレガシーシステムを使い続けている企業が多いという事実を踏まえると、日本が既に「2025年の崖」へ転落しつつあると言ってもよいのかもしれません。

日本を「2025年の崖」へ引きずりこむ課題

出典:経済産業省

経済産業省のレポートでは、日本を「崖」へ引きずり込むITシステムおよび産業の課題を記載しています。

1つ目に「日本ではユーザー企業よりもベンダー企業にITエンジニアが多く所属している」問題

ユーザー企業は、ベンダー企業に受託開発を依頼する構造となっているため、ユーザー企業側にITシステムに関するノウハウが蓄積しにくい現状になっています。

「既存システムの保守・運用もベンダー企業に任せているのだから、DXへ向けたシステム刷新もまたベンダー企業へ任せればよい」と考える方がいるかもしれません。

しかし、そう簡単に外部企業へ任せてDXを実現できるわけではありません。

2つ目は「有識者の退職などによるノウハウの喪失」問題

大規模なシステム開発を行ってきた人材が定年退職の時期を迎え、属人化していたノウハウが失われて、システムのブラックボックス化が起きている。

さらに業種によっては企業間の合併や買収が活発化し、それに伴うITシステムの統合などによって複雑度が増大し、さらに俯瞰が困難になっているケースも多くある。

「2025年の崖」を回避するために行うべきDX

以前にもDXのステップを書きましたが、2025年の崖を踏まえ再度ファーストステップをお話ししていきます。

①業務フローの作成とレガシーシステムの視える化

以前のお話の中でも記載してきたが、経営者のDXへの意識改革を行い、全社的に必要性を認識していかなければならない。

その後、現在のITシステム(レガシーシステム)の視える化を行わなければならない。

これは全部門の業務フローと合わせて作成すべきである。2025年の崖を回避するためのDXであると同時に、働き方改革・組織の活性化・オペレーションの効率化なども同時に行うことができる。

まずはレガシーシステムの視える化を行い、DXのステップの明確化が必要である。

②DXで目指すべき姿の共有

DXとはデジタルを活用した企業改革である。とお話ししましたが、DXの推進には、全社的な協力が求められます。

DXは語源のとおり「デジタルトランスフォーメーション」であり、単なる新技術の導入ではありません。こうした新技術によって、ビジネスモデルや製品・サービスの変革を起こすことがDXであることを踏まえると、IT部門や一部の事業部門のみならず、経営者や大半の事業部門を含めた体制づくりが欠かせません。

関係者の間で、「DXで何を目指すのか」という目的・ビジョンが共有されていることも大切です。このレポートでは、「明確な目標設定をせずに、レガシー刷新自体が自己目的化すると、DX につながらないものができ上がってしまい、再レガシー化の恐れがある」としています。

2025年の崖&DXに向け経営判断を!

ユーザー企業が2025年の崖を乗り越えていくためには、早期のシステム刷新の経営判断を行う必要があります。

DXに向けて今一度考える時間を早めにとってみてはいかがでしょうか。